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二軒の居酒屋

学生の頃、居酒屋でホールのアルバイトをしたことがある。そこで約半年間働いていたが夏休み明けに行くのが面倒になり黙って辞めてしまった。それから数年後、たまたま仕事を辞めて次の仕事が決まるまでのつなぎにとアルバイト求人雑誌から適当なお店を選び電話をかけて面接に行った。

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偶然にも以前アルバイトをしていた隣のお店で働くことになり

そのお店も居酒屋であった。住所を聞いた時点では気がつかなかったが、地下鉄の駅をおりて電話で案内された道順に足を進めると、以前歩いた場所、当時の記憶が蘇ってきて、そのお店は学生時代にアルバイトをしていた居酒屋の隣のお店であるということに気がついた。どうりで分厚いアルバイト求人雑誌のなかで目に止まったわけである。昔働いて場所だからその住所が記憶に残っていて、そのことに気がつかないでアルバイトの申込みの電話をかけてしまった私はなんて間抜けなんだろうと思う。

さて隣合う二軒の居酒屋は共に大手企業の傘下にある居酒屋チェーン店であった。だから学生の頃に働いていた居酒屋では当時の従業員の人はとうにいないと思っていたが、これが間違いであり、店を仕切っていた女将さんと呼ばれていた女性の方は当時と同じようにそのお店にいて店を仕切っていた。その情報は同じ店で働いていた同僚のアルバイトから聞いた話であり、また私がアルバイトをしている店の前をその女将さんが歩いているのを何度か見かけた。だから私は学生時代に働いていたお店の前を通るときは、できるだけ速足で歩きその女将さんに会わないように心がけていた。
そんな状態で半年が過ぎ、ある日何か資材か食材を借りに隣にお店に行く用事ができてしまった。他に行く人もなく仕方なく私が隣にお店に行くと、最悪の展開というか、来るときが来たかというような感じで女将さんが出て対応をしてくれた。

さてその女将さん、その日の不思議そうな眼をして私を見たのを今でも忘れられない。たぶん私が当時はお世話になりましたなんて一言言えば笑い話ですんだものを、過去の自分とは別人のような他人のふりをして対応をしたものであるから、昔働いていたアルバイトにもの凄いよく似た人があらわれたと驚いたと想像する。今考えると、この女将さんにあの居酒屋を辞めた時と他人のふりをして驚かせた時と二度迷惑をかけたことになる。なんとお騒がせな人だろうとつくづく反省する。
あれから十数年、もう隣合う二軒の居酒屋も不景気の影響を受けなくなり、あの当時の面影はその場所にはない。人は過去の自分と別人になりたくなるときがある。居酒屋でアルバイトをしていた頃は正にそのような心境であったのではないかと思う。でも隣合う二軒の居酒屋がなくなった現在、当時の自分になりたいと切望する自分が心のなかにいる。不思議な心境である。

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